「校長室の窓から」(平成26年度)
「校長室の窓から」 平成26年度 (窪西光範校長)
平成26年度 3学期「パピルス」原稿
「不思議なこと」や「何か訳の分からないもの」
「妖怪ウオッチ」が大人気のようです。妖怪執事ウィスパーと出会って、妖怪を見ることのできる妖怪ウォッチを手に入れた主人公が、あちこちで妖怪と出会い一緒に活躍するというストーリーですが、「妖怪」とは辞書によると、「人知では解明できない奇怪な現象または異様な物体。ばけもの。」とあります。「妖怪ウオッチ」というとずいぶん親しみやすく身近な感じがするのですが、「妖怪」だけを取り上げると怖さが先行しそうです。
今なぜ「妖怪ウオッチ」が大流行しているのか私には分かりませんが、人は、特に子どもの頃は、「不思議なこと」や「何か訳の分からないもの」に対して、怖いという気持ちと同時に「なんなんだろう」と興味を感じるようです。
現代の社会は、照明があちこちで輝き「明るい」ことが当然のようになっています。そしてこれまで分からなかったことが科学の目で解明され、これまで不可思議と思っていた多くのことが、理論・理屈で説明できる時代になってきています。これは人類の進歩としてありがたいことなのですが、「不思議なこと」や「何か訳の分からないもの」も、人の健康や幸福に支障のないかぎりでという注釈はつくのですが、少しは残っていてほしい、大切にしたいと私は思っています。たとえば、妖怪や未発見の不思議な生物がいてくれたらいいのに、という子どもの頃に抱いた気持ちは大人になっても、年老いても持ち続けたいと思っています。
今、私の枕元にはコナン・ドイルの小説「失われた世界」が置いてあります。セピア色に変色してしまった古びた文庫本ですが、南アメリカ大陸に残された未知の台地と恐竜の話は何度読んでも楽しくわくわくした気分にしてくれます。
書かれてから多くの時間が経過し、現代の読者からはあまり顧みられなくなった小説の中にも、きっと今に通じる「不思議なこと」や「何か訳の分からないもの」があるはずです。もしよかったらそんな小説を探して手にとってみてください。
平成26年度3学期始業式あいさつ
おはようございます。そして改めまして、明けましておめでとうございます。2015年、平成27年の新春を迎えましたが、皆さんはどのような正月であったでしょうか。
新しい年を迎えて今年はこれをと、決意をした人もいるかもしれません。
今年は未年です。羊は中国の吉祥動物の一つで、「家族の安泰」や「平和」に暮らすことを意味するともいわれていますが、現実の社会は、自然災害が世界のあちこちで噴出し、これまでの枠組みを超え、国をまたいでイスラム国ができて紛争の種となったり、とても平和とはいえない状況が世界で続いています。
おかげで我が国は、様々な問題や課題があるとはいえ、一定の平穏の中にありますが、そんな我が国でも自然災害が続き、これまでの自然との関わり方では生き抜いていけないのではないかと思うときがあります。
激動の時代というフレーズがよく使われますが、人々の意識や価値観が変化し、自然も、世界のあり方も確かに大きく変化しています。
これからは、大学に入学できたから大丈夫、会社に入ったから安泰という時代ではありません。一人一人が生き抜いていく力をつけていかなければならない時代であると言われています。
生き抜いていく力をあえて分類すれば、体力や知力、精神力や学力といろいろ考えられますが、一番根底にあり土台となり、最終的に頼りになるのは心のあり方です。
真面目に正直に物事に取り組み、人のことを考えることができる心の力です。あの人は人を裏切らない、自分だけのことではなく人のことを考える。このように他人から思われる人ほど強い人はありません。
もちろん体力や学力、気力は鍛え養っていかねばなりません。その上で最後に頼りになる、力が心の力。この世の中は物でできあがっているのではなく、人と人が関わり合うことで構成されています。生きぬく力の中で一番頼りなく当てになりそうにない心の力ですが、最後の頼りになる力が、このような真面目に正直に物事に取り組み、人のことを考えることができる心の力です。
他人のことを考える、そんな人を、他人はほおってはおきません。学力を磨く、体力をつける、精神を鍛える、その際にこれらの力のベースになるのが心の力だと知っておくことはとても大事で、これからを生き抜いていく上で大切なことだと思います。年始に当たり少しお話ししました。
最後に、いつも終わりが肝心と言っています。終わりは次の始まりに通じる。1、2年生は次の学年へのよい締めくくりを、3年生は限られたこの短い期間を、3年間の締めくくり、次のステップのはじまりと考え充実した時間を送ってくれることを期待して、3学期始業式の話とします。
平成26年 こまどり原稿
平成26年も残すところわずかとなり、本格的な冬の訪れを実感するころとなりました。育友会の皆様には日頃から本校の教育活動に御理解と御協力を賜り、心から感謝申し上げます。
さて、この稿では全校集会などの学校行事で、私が生徒たちに話をしていることを二つ紹介させていただきたいと思います。
○「時間」について
「『明るく 元気に 楽しく』を本校のモットーに掲げているが、本当の意味で、明るく、元気に、楽しく、学校生活を送るために、考えてほしいことの一つに『時間』がある。時間は皆に平等に与えられ、限りがあり、後戻りすることができないものである。この当然のことを、よく考えてみてほしい。三年生の中には、進路決定の正念場を迎え懸命に努力している人もいれば、既に進路が決まりほっとしている人もいることと思う。今進路決定の正念場を迎えている人は、あきらめずトライする気持ちをもち続けてほしい。限られた時間、平等に与えられた時 間を精一杯有効に使って努力を続けてほしい。ほっとしている人には、時間はつながっているということ、終わりの締めくくりの仕方が、次のスタートに大いに影響するということを肝に銘じてもらいたい。時間はつながっている、終わりは始めである。」
○「プラスとマイナス」について
「今、少し元気のない人、少しやる気を失っている人もいるだろう。平等に与えられた時間はずっと続くが、同じ波では続かない。辛いことも悲しいことも苦しいことも、またよいこともずっとは続かない。それが私たちの時間である。今マイナスと感じていても必ずプラスの時期はくる。そしてプラスの時には、永遠にプラスが続くと思わず気持ちを引き締めることが大事である。プラスとマイナスに関して言えば、人は必ずプラス面をもっている。人には、自分のマイナス面しか見えない時があるが、プラス面が必ずあるということを信じて、前向きに進んでほしい。時間も前向きにしか進まない。」
校長として、このような話をしています。
本校には、素直で心根の温かい、そして「伸びしろ」をもった生徒がたくさんいます。どれほど参考になっているかわかりませんが、生徒たちには、素直で温かな心を大切にし続けてほしい、自分の「伸びしろ」をしっかりと伸ばしてほしいと思い、少しでも考える糧になればと、以上のような話をさせてもらっています。
最後になりましたが、生徒たちにも不便をかけていました体育館の耐震工事が10月15日に終了いたしました。この間、保護者の皆様には御理解と御協力を賜り改めてお礼申し上げます。
今後とも本校の教育活動への御支援を何とぞよろしくお願いいたします。
窪西 光範