視覚障害・目の病気等について
1.視覚障害
視機能(視力・視野・色覚等)の永続的低下の総称を視覚障害といいます。教育の立場から主にポイントとなるのは、視力障害と視野障害、色覚特性についてです。たとえば、眼鏡やコンタクトレンズの使用、手術等の医学的処置等によっても視力が出ない、上がらない状態を視力障害といいます。黒板やテレビに極端に近づいて見ようとしたり、眼鏡をかけても黒板に書かれた文字や教科書の文字を読むのに支障をきたすことがある場合、視力障害があるのではないかと考えられます。また、視野は1点を見つめたまま見える範囲のことで、正常値は上方50度、鼻側60度、下方70度、耳側90度程度です。視野が狭かったり、欠けていたりする状態を視野障害といい、中心暗点、輪状暗点、半盲、求心性狭窄などがあります。たとえば、よく物を倒す、肩がぶつかることが多いなどの点から視野障害に気付くことがあります。
2.盲・弱視
「盲」とは、点字を常用し、主として聴覚や触覚を活用した学習を行う必要のある状態をいい、全盲(視力0)、光覚弁、手動弁、指数弁が含まれます。また、視力が0.02未満の場合も点字を使用したほうが学習効率は良いといわれています。
「弱視」とは、両眼の矯正視力がおおむね0.3未満で、視覚を活用した学習や日常生活が一定程度可能な状態をいいます。視力が0.02以上あるときには、普通の文字(墨字)を使うことが多いです。
3.夜盲・羞明
「夜盲(暗順応障害)」とは、明るいところから暗いところに入ったときの眼の明るさへの順応に関する障害です。暗い場所では、暗順応が行われるのを少し待ったり、手引きなどの誘導を行ったりする必要があります。
「羞明」とは、通常は気にならないような光の状態や明るさに苦痛を感じる状態です。帽子を着用したり、遮光眼鏡を使用したりすることで対応します。
4.色覚特性(色覚障害)
色の見え方には個人差・多様性があり、生まれつき、色の見え方が多くの人と異なる人がいます。日本人では、男性の約5%、女性の約0.2%の人に何らかの色覚特性(色覚障害)があるといわれています。視覚障害や眼疾患がある場合には、その影響も考えられ、色の感度が低いことがあります。
5.眼に関する主な疾患・障害等のミニ解説
〔近視〕
☑近くを見るときには、眼鏡なしでもはっきり見ることができます。
☑遠くを見るときには像がぼけて見えるため、凹レンズで矯正します。
〔遠視〕
☑遠近いずれにあるものでもはっきりとは見えにくく、凸レンズで矯正します。
☑目が常にピントを合わせようとしているため「疲れやすい」、「集中力が続かない」など
の症状が出ることがあります。
〔乱視〕
☑角膜や水晶体の歪みに原因があることが多く、焦点が1点に集まらず、像がぼやけます。
☑大部分の乱視は、近視や遠視と同じように補正レンズで矯正できますが、角膜の病気など
が原因で起こった不正乱視はハード系コンタクトレンズでの矯正が必要となります。
〔斜視〕
☑物を見ようとする時、片眼は正面、反対の眼が違う方向を向いている状態で、内斜視・上
斜視等と診断されます。
☑生まれた直後から斜視とわかる場合や成長とともに目立ってくる場合があります。
〔緑内障〕
☑視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気です。治療(点眼、レーザー治療等)が遅れ
ると失明に至ることもあります。
☑眼圧を下げることができれば、緑内障の進行を防止したり、遅らせたりすることができる
可能性があります。
〔白内障〕
☑さまざまな原因で水晶体が濁る病気で、早い人では40代から、80代では大部分の人で白内
障が発見されます。
☑日常生活が不自由になれば、濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを挿入する方法
が一般的です。
〔黄斑変性症〕
☑網膜の中心部(黄斑)に障害が生じ、「物がゆがんで見える」、「真ん中が見えなくな
る」、「見ようとするところが見えにくくなる」などの症状が現れる病気です。
☑加齢とともに網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積して生じる病気が加齢黄斑変性です。
〔角膜白斑〕
☑角膜が混濁して、後に白い斑点となったもので、原因としては外傷、感染、先天的な病気
など多くが考えられています。
☑原因となった外傷や病気の治療をしても効果がなく、広い範囲が白斑になった場合、角膜
移植が必要となります。
〔網膜・視路障害〕
☑網膜の情報が視神経を経て視覚中枢に至る経路に現れる変化です。
☑両眼に同程度に「視力が下がる」、「視野が狭くなる」などの症状が起こることが一般的
ですが、時に片眼からはじまることもあります。
〔小眼球症〕
☑先天的に眼球が小さい状態で、眼球全体が小さいもの以外に、角膜、水晶体、網膜・硝子
体等の発生異常に伴って眼球の発達が障害されて起こるものもあります。
☑強度屈折異常を合併するため、早期より眼鏡の常用による弱視治療を行い、保有視力の発
達を促すことが大切です。
〔無虹彩症・虹彩欠損〕
☑無虹彩症・虹彩欠損は虹彩が完全または不完全に欠損している遺伝性の病気で、出生時か
ら両眼に視覚障害があります。
☑網膜の黄斑低形成のために視力は悪く、また虹彩がほとんどないために羞明を訴えます。
〔糖尿病網膜症〕
☑糖尿病腎症・糖尿病神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつです。血管が詰まった
り、破れたりすることによって、網膜に栄養が行き渡らなくなり、視覚障害が引き起こさ
れます。
☑糖尿病の方は定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けることで早期に対応することが大切
です。
〔未熟児網膜症〕
☑胎児の網膜がほぼ完成する妊娠9か月以前に生まれると網膜の血管が未完成の状態です
が、未熟児の保育上、必要な酸素をたくさん与えられると、未完成の網膜に異常が起こ
り、視力が悪くなったり、失明したりすることがあり、これを未熟児網膜症といいます。
☑光凝固術や冷凍凝固術という治療を行います。光凝固術は完全ではありませんが、かなり
の程度まで弱視や失明を防ぐことができるといわれています。
〔網膜芽細胞腫〕
☑小児がんの一種で、ひとみの奥が白く光る症状で気付くことが多いといわれています。
☑腫瘍が大きい場合、眼球を摘出し、がんのひろがりや脳への転移を防ぎます。初期に発見
されると、放射線療法や化学療法で保存的治療が行われることもあります。
〔網膜色素変性症〕
☑眼の中で光を感じる組織である網膜の視細胞(桿体細胞)に異常が見られる遺伝性の病気
で、夜盲、視野狭窄、視力低下等の症状が徐々に進行しますが、進行のスピードは個人差
が大きいといわれています。
☑国の指定する難病の1つで、申請により基準を満たす場合は医療補助が受けられます。
〔網膜剥離〕
☑前駆症状として飛蚊症や光視症が現れることがありますが、無症状のこともあります。病
状が進んでくると視野欠損や視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはあり
ませんが、治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。
☑眼底検査により網膜が剥離しているかを調べ、網膜剥離への進行を抑えるレーザー治療が
行われたり、剥離が発生している場合には手術が行われたりします。
このページの作成に当たっては、次の機関のホームページを参照した。
○公益財団法人 日本眼科学会
○公益社団法人 日本眼科医会
○公益財団法人 難病医学研究財団(難病情報センター)