難聴児への支援と配慮

  
きこえない・きこえにくい子どもへの支援と配慮について 
  
地域の学校や特別支援学校にも難聴児は多く存在します。「きこえない・きこえにくい」ことが、日常生活や学校生活へ与える影響は大変大きいものがあります。そのことを理解した上で、どんな支援や配慮が必要になるのかを考えなければなりません。子どもたちの特徴から見えてくる支援や配慮の例を挙げてみます。 
  
1 状況に左右される「きこえ」への対応 
 補聴器を装用すると、とても小さな音でも聞こえる子どもは多くいます。しかし、それは「いつでも」「どこでも」同じきこえ方をしているわけではありません。静かな場所での1対1の会話は、比較的聞きとりやすいのですが、教室内、校庭、体育館での全校集会などでは騒音がとても大きく、必要なメッセージが騒音でかき消されてしまうことはとても多いのです。私たちには何でもない音でも、補聴器で増幅された音は想像以上にうるさくなっていると考えておく必要があります。 
  
〇騒音を減らす 
  
 周囲の雑音をできるだけ少なくしてから、授業や大事な連絡は伝えるようにするとよいです。「プリントを配りながら」「移動しながら」「黒板を書きながら」の発話は、避けたいものです。補聴器は、小さな音まで拾うことができますが、余計な音まで大きくしてしまうものでもあります。 
  
〇教室内の環境整備に留意する 
 机や椅子をひきずる音は大変大きいものです。教室の机や椅子にテニスボール 
をつけるだけで、教室内の騒音がかなりカットされます。テニスボールは、スポーツ 
エコネットなどで入手できます。 
  
 


  
〇FM機器・ロジャー補聴援助システムの活用 
  
 補聴機器だけでは、まわりの雑音も同時に多く拾ってしまうので、 
大事なメッセージを聞き漏らすことが多くあります。FM機器・ロジャー 
補聴援助システムを活用し、マイクを通して、先生や発言者の音声を 
直接難聴児に届けたり、CDデッキや放送システムにつないで音楽や 
放送内容を聞きやすくするシステムの活用も効果的な支援です。

 

 
  
 

  
〇視覚的な情報を増やす 
 集中して聞いていても、やはり聞き漏らしたり、きこえなかったりすることは多くあります。大事な情報は要点だけでいいので、板書したり、プリントにして配布したりするなど「見て分かる」「残る」形で提示するとよいです。 
 また、話し手の口元を見せることも大切です。黒板を見ながら発言したり、後方から声をかけるのではなく、話し手に注目しているのを確認してから口元を見せたりして話し始めるようにしましょう。 
  
2 心理的サポートの重要性 
 地域の学校や特別支援学校に通うきこえない・きこえにくい子どもは、「自分だけ」が補聴機器を装用していたり、周りの友だちの会話に「自分だけ」がついていけずに孤独感を感じたりしていることが少なくありません。精一杯努力して周りについていこうとするために、無理をしてしまい、心理的に不安定になってしまうケースもあります。 
  
〇子どもの心理的サポート 
  
 地域の学校や特別支援学校に通う難聴児は、「きこえない・きこえにくい」同じ立場の友だちや先輩に出会う機会が大変少ないです。そのために、「自分だけがきこえない」ことをどのように理解すればよいのか、また困っていることを相談する場も少ないです。ろう学校では、聴覚障害への心理支援を専門にするカウンセラーによるカウンセリングも実施しており、心理的支援を受けることで自分を見つめなおしたり障害認識を深めるよいきっかけになっています。 
また、難聴児同士の交流の場などで、同じ立場の友だちに出会うことで、「自分だけ 
じゃない」ことがわかり、「十分に通じ合えるコミュニケーション」を経験できることはと 
ても大事です。本校でも毎年開催されていますので、ぜひご参加ください。 
 
 


  
〇保護者に対する心理的サポート 
  
 きこえない・きこえにくいお子さんを持つ保護者も学校や地域での生活で、孤独感を感じ 
ている方は多くいます。難聴に関する正しい情報が入りにくかったり、逆にインターネットや 
SNSなどの普及で情報過多になったりしてしまう場合もあります。保護者の悩みや疑問に 
答える時間は丁寧に設定する必要があります。難聴児本人への支援と同様、保護者がカウ 
ンセリングを受けたり、保護者同士が交流する場で、育児の見つめ直しや子どもとの関わり、 
難聴への理解を進めていく経験も必要です。本校は、保護者への支援の一環として相談 
やカウンセリングの機会を提供しています。

 

 

  
3 担当者の「きこえない・きこえにくい」ことへの理解促進 
 子どもたちは長時間学校で過ごしています。上記のような配慮や支援を行うためにも、担当者の難聴への理解が大変重要になります。そのため本校ではさまざまな取り組みを行っています。 
〇研修会の開催と連携づくり 
 ろう学校では、「聴覚障害担当者研究会」「保健師研修会」を定期的に開催しています。きこえない・きこえにくい子どもの理解、指導、支援について学び合い、情報交換を進めたり、きこえのしくみや聴覚障害の理解、早期教育の実際などについて学んだりしています。それらを通じて医療・保健・教育といった早期支援のネットワークづくりを進めています。 
  
〇在籍校の校内研修会への講師派遣 
 難聴幼児・児童・生徒の理解を深めるとともに、個々のケースに合わせた具体的な指導・支援につながるよう、在籍校の先生方を対象にした研修会への講師派遣を行っています。 
  
〇情報誌の発行 
 ろう学校では、聴能情報誌 「音・きこえのノート」や支援部だより「つながり」を郵送・メール配信し、聴覚障害に関わるさまざまな情報を地域に向けて発信しています。(情報誌のページへリンク) 
また、教材・参考資料のページでも、配慮や支援に役にたつ情報を掲載しておりますので、ぜひご活用ください。