第56回卒業証書授与式 答辞
答 辞
凍てつくような冬の外気も和らぎ、あたたかな風に春の訪れを感じる今日のこの佳き日、私たち第56期生の為に、このような素晴らしい式を挙行してくださり、心より感謝申し上げます。
3年前、真新しい制服に身を包み、これから始まる高校生活に期待と不安を抱きながら生駒高校の正門をくぐったことが、昨日のことのように感じられます。慣れない満員電車。息を切らして登った生駒の坂。正門から見える雄大な生駒山。私たちにとってすべてが新しく、夢と希望に満ちた日々が始まりました。
平城宮跡やならまち探索、生駒山上遊園地。小雨降る中ではありましたが、新しく出来た友人やクラスメイトとの距離が縮まった「校外学習」。 2学期には、地元生駒各地をフィールドワークで訪れました。長弓寺や竹林寺、甘酒が美味しかった地元の造り酒屋。生駒の歴史や文化に改めて触れた1日となりました。
高校生活最大のイベントと言えば2年生のときに行った修学旅行です。明治維新を支えた英雄たちの姿や幕末の薩摩の様子を学んだ「維新ふるさと館」。桜島や錦江湾を取り入れた雄大な景色が美しかった「仙巌園」。勇ましい飛行機の見学だけでなく、戦争の悲惨さと平和の尊さを学んだ「鹿屋航空基地資料館」。 民泊では、悪天候のなかでも私たちが楽しめるよう、いろいろな体験をさせてくださいました。民泊のお父さん、お母さんと一緒に作った手料理。自分たちで収穫した野菜を使った料理は格別でした。鹿児島県の名産、カンパチをさばくという珍しい体験もしました。そんな楽しい時間もあっという間。名残惜しい気持ちを感じながら迎えた鹿児島での最終日。念願だった「白熊アイス」にかごしま水族館。夜のホテルでは先生方が企画して下さったビンゴ大会。本当に楽しいひとときでしたが、特別警報が発令され、明日帰れないかもしれないと知った時、一気に不安が胸に広がりました。しかし、同じ部屋の友人と話しているうちにいつの間にか不安は紛れ、眠りについていました。4日目。無事に奈良に戻って来られて、ほっとした反面、「これで修学旅行が終わってしまった」と寂しい気持ちになりました。悪天候で予定通りにはいかなかったこともありましたが、最高に楽しい修学旅行として心に残っています。
高2の「樫葉祭」。私たちにとっては最後の文化祭となりました。夏休みを返上して、クラス一丸となって練習したダンス。どのクラスもレベルが高く、樫葉祭を盛り上げました。一人ひとりが競技や行進に全力を注いだ「体育大会」。恒例の「部活動対抗リレー」で久しぶりに見た先輩方のユニフォーム姿。生き生きとした先輩方の活躍を眺めながら感じた淋しさ。先輩方とともに過ごす最後の学校行事が終わろうとしていました。
そして迎えた3学期。受験生としての自覚が芽生え始めた矢先、新型コロナウイルスの脅威に私たちの学校生活はさらされました。初めての緊急事態宣言。友達にも先生にも会えなかった在宅教育期間。ようやくクラスの半分と顔をあわせた分散登校。樫葉祭、体育大会など、楽しみにしていた行事は次々と中止となり、私たちの行動も制限されることが多くなりました。それでも、私たちは、精一杯努力し続けました。コロナウイルスにも、受験のプレッシャーにも負けないように。必死に前を向いて進んでいきました。
唯一の行事は2学期に行われた「球技大会」。みんなの笑顔が輝いた最高の学校行事になりました。この時期から、自習室やミライコマに3年生の姿が多く見られるようになりました。また、空き教室では面接や小論文の指導を受けている人も増えました。私もその一人で、集中力が切れたとき、自習室で必死に勉強している友人の姿を見て、やる気を取り戻したことがあります。「切磋琢磨」…それが私たちの学年でした。
「文武両道」を掲げる生駒高校は部活動も盛んで、毎年多くの人が近畿大会や全国大会に出場しています。「真面目に一生懸命頑張ることがかっこいい」。この校風を体現した結果だと思います。残念なことに、今年度、多くの人は3年間の集大成を公式の場で披露することは叶いませんでした。けれども、どんなにしんどい練習でも乗り越えてきた精神力、お互いに仲間を支えあったあの時間は、きっとこれからの未来を切り拓く、心の糧になるはずです。
受験の不安とコロナウイルスの恐怖にさらされる中、いつも優しく相談に乗って下さった生駒高校の先生方、本当にありがとうございました。先生方はいつも私たちのことを第一に考えて下さり、一人ひとりの夢の実現に向け、問題解説や面接指導、小論文練習など、様々な形でアシストして下さいました。時には厳しく、時には優しく、親身になってご指導して下さったからこそ、私たちは夢の実現への道を一歩ずつ歩むことが出来たのだと思います。また、つらい時、嬉しい時、いつも隣にいてくれた友達。出会ってくれて本当にありがとう。意見がぶつかってすれ違ったこともたくさんありましたが、それ以上に一緒に居ていろいろなことで笑いあった日々は本当にかけがえのない大切な時間でした。
今日、この式には残念ながら参列してもらえませんでしたが、在校生のみなさんに贈りたい言葉があります。「水滴石を穿つ」。小さなことでも継続することで大きな結果を生み出すという意味です。毎週月曜日の英単語テスト、各授業の小テスト、一見小さなことですが、努力し続けることで、本番の大きな成果につながります。しかし、小さな努力はその成果がなかなか目に見えないため、時々不安な気持ちになると思います。そんな時は、一人で悩まず、周りの人をたくさん頼ってください。そして、決してあきらめることなく、小さな努力をし続けてください。先生方、このメッセージを在校生のみなさんに伝えていただければ幸いです。
最後に私たちを18年間育ててくれたお父さん、お母さん。本当にありがとうございました。特に最後の一年間は、たくさん苦労をかけました。それでも嫌な顔一つせず、いつも変わらず支えて下さいました。今度は私たちが支えられるように、自分の道をしっかり進み続けていきます。
今日、生駒の坂を降りれば、私たち311人はそれぞれの道を歩み始めます。離れ離れになったとしても、「栄光の緑スリッパ」である私たちならどんな大きな壁にでも立ち向かっていけるはずです。そして、生駒高校で得た経験をこれからの人生の道標とし、自分らしい人生を謳歌していきます。最後になりましたが、これまで私たちを支えて下さったすべての方々に改めて御礼申し上げるとともに、生駒高校の益々の発展を心より祈念して、答辞といたします。
令和3年3月1日 卒業生代表 尾上 碧
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