ごあいさつ                             

 第25代校長 井上 惠充

   本校のHPを御覧いただき、ありがとうございます。

 本校は、明治29年に奈良県立尋常中学校五條分校として誕生し、昭和23年に男女共学の五條高等学校となりました。その2年後に、夜間定時制課程と賀名生(あのう)分校が併設され、それぞれが独自の教育活動を長きにわたって続けてきましたが、昨年度の4月から賀名生分校が五條市立西吉野農業高等学校として生まれ変わり、昨年度末には夜間定時制課程が閉課程となりました。輝かしい歴史と伝統のある高等学校であり、これまでの先輩の方々は、「質実・剛健・礼節」を校訓として受け継ぎながら、高い志をもって勉学に励むとともに、文化、スポーツ活動の両面で活躍され、県南部教育の拠点として、五條高等学校の名声を高めてこられました。先輩方が築いてこられた確かな伝統を継承し、更なる飛躍を目指してまいりたいと考えています。

 さて、4月11日の入学式で新入生を迎え、令和4年度がスタートしました。新型コロナウイルス感染防止の観点から規模を縮小しての挙行となりましたが、新入生の皆さんが新しいさわやかな風を運んでくれました。これからの学校生活において、夢と希望の実現に向け、若さ溢れるエネルギーを遺憾なく発揮してくれることを期待しています。

 入学式では、新入生に次の三つの話をしました。

 一つ目は、「自立」ということです。「自立」とは、「自らの意思で主体的に行動し、自ら責任を負う」ということです。物事を行う時に、自己の責任において実施できていたでしょうか。自らの進むべき道は自ら切り拓(ひら)いていかねばなりません。海を走るヨットは風を帆で受け、クルーがその帆の向きを操り、目指す方向にヨットを自由自在に進めていきます。知識と経験が豊かであれば、風がフォローであれアゲインストであれ、状況を把握しながらヨットを目的地に向かって進めることができます。ヨットの操縦のように、これからの人生において、どんな状況に出くわしても、自分の意思で目的地に向かって突き進んでいくことができるよう、知識と技能、そして判断力を磨いてください。

 二つ目は、「コミュニケーション力を高める」ということです。フロイトやユングと並び称される心理学者のアドラーは、対人関係を改善する、即ち、コミュニケーション力を高める魔法の言葉が三つあると言っています。一つは、「ありがとう」という言葉です。この言葉によって、相手に感謝の意が必ず伝わります。二つ目は、「うれしい」という言葉です。この言葉は、素直な自分の気持ちを相手に伝えることができる言葉です。三つ目は、「たすかりました」という言葉です。この言葉は、感謝の気持ちを正直に伝える言葉です。五條高校には「志、夢、絆」というスローガンがあります。志高く、夢を大きくもち、さわやかな挨拶で相手に温もりを伝え、「ありがとう」「うれしい」「たすかりました」という魔法の言葉で互いの絆を深めてください。相手の気持ちを思いやる豊かな人間性を身に付け、生きる力を磨いてくれることを願っています。

 三つ目は、本校の校訓である「質実・剛健・礼節」についてです。「質実」とは真面目で飾り気がない様子、「剛健」とは心身ともに強くたくましいこと、「礼節」とは相手を尊敬し、自分自身を謙虚に顧(かえり)みて、時と場合に応じたわきまえた行動ができるということを示しています。この校訓は、時代を超えて今もなお脈々と受け継がれ、本校卒業生の心の糧となっているもので、新入生の皆さんも、日々自らを振り返る際の拠(よ)り所としてほしいと思います。校訓を礎とし、心の豊かさと生き抜く力をしっかりと磨いてください。

 これら三つを礎としながら、「夢や希望の実現に向け、様々な課題に積極的に挑戦する生徒」「確かな学力、豊かな人間性、たくましい心身を備えた生徒」「自他を尊び、地域・社会に貢献する自立した生徒」の育成を目指し、地域や保護者から信頼され愛される「魅力と活力ある学校」づくりを推進していく所存です。子どもたちが「行きたい学校」に、保護者の方々が「行かせたい学校」に、そして、在校生や卒業生が「来て良かったと思える学校」になるよう努力を重ねてまいります。どうぞ本校の教育方針を御理解いただき、今後とも保護者や金陽会(同窓会)、そして地域の皆様方の特段の御協力と御支援を賜りますようお願い申し上げます。