令和3年度 卒業式式辞
式辞
木々の芽吹きが始まり、春の息吹を感じる今日の佳き日、令和3年度 奈良県立生駒高等学校 第57回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより、教職員にとりましても大きな喜びであります。
ただいま、卒業証書を授与されました309名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、入学以来たゆまぬ努力を積み重ね、本校所定の教育課程を修了し、めでたく今日の日を迎えました。
本校で充実した高校生活を送っていた皆さんは、第1学年が終わろうとしていた令和2年の3月、突然「一斉休校」が始まり、大きな変化を余儀なくされることとなりました。やっと登校できるようになったのは2年生の6月になってからでした。皆さんが先輩たちとともに目標にしていたインターハイや夏の甲子園大会などが中止となり、それに伴い、県予選大会やコンクールも中止になり、非常に悔しい、残念な思いをした人も多かったと思います。校内においても、皆さんが最も楽しみにしていた樫葉祭や体育大会が中止となりました。修学旅行も時期や方面を変更し、実施を検討しましたが、最終的には三重県への校外学習に変更しました。皆さんには本当に残念な思いをさせてしまい、申し訳なく思っています。
しかし、皆さんはコロナ禍における様々な変化や制約、新しい生活様式を受け入れ、校内で感染が拡大することもなく、本校生らしい堅実な学校生活を全うしてくれました。学習や部活動においても全力で取り組んでくれました。また、「真面目に一生懸命頑張ることが格好いい」という本校の良き校風もあらゆる場面で発揮してくれました。
皆さんは、コロナ禍の中で高校生活を送り、新型コロナウイルス感染症を乗り越えた世代として、これから先、記憶されることと思います。
さて、先日行われました北京冬季オリンピックでは、日本人選手が大いに活躍しました。その中で羽生結弦選手のインタビューの言葉が印象に残っています。その言葉は、「報われない努力だったかもしれない」という言葉です。
羽生選手は、前回の平昌(ピョンチャン)オリンピックで金メダルを取ってから4年間努力を重ねて、今回の北京オリンピックに臨んだものの不運もあり、メダルには届きませんでした。その間の努力があったからこそ「報われない努力」と表現することができたのだと思います。そこには、結果を出すことだけに価値があるのではなく、何かに打ち込み、何かに一生懸命になることが尊いということを伝えてくれています。
皆さんには、2学期の終業式で小説「赤毛のアン」に出てくる言葉、
「一生懸命やって勝つことの次にいいのは、一生懸命やって負けること」
を紹介しました。
結果が全てではなく、自分がどれだけ努力したかが大切である。もちろん結果が良ければ一番良いのだけれども、一生懸命やること、やったと言えることが大事である。最善を尽くせば、結果がどうであろうと、後悔しないということを伝えました。
皆さんには、後悔しない日々を送るために、常に最善を尽くしてほしいと思います。皆さんは、校章や校歌にもある「樫」の木の精神「決して途中で諦めたり、へこたれたりしない。最後の最後まで全力で頑張り抜く。」という強さを本校で過ごした3年間でしっかりと身に付けてくれました。
常に最善を尽くすことで、困難に直面しても本校で身に付けた樫の木の精神のもと、困難を乗り越えてください。皆さんならば、必ず乗り越えることができます。
最後に、もう一つ、皆さんに私の好きな言葉を伝えておきたいと思います。
「雲外蒼天(うんがいそうてん)」という言葉です。漢字では、「うん」は空の「雲」、「がい」はうちそとの「外」、「そう」は草がんむりに倉庫の倉、青いという意味の文字です、そして「てん」は天井の「天」。意味は、「雲を突き抜けたその先には、青空が広がっている。」ということから「努力して苦しみを乗り越えれば、すばらしい世界が待っている。」ということを示しています。私たちは、今、新型コロナという困難に直面していますが、人類が新型コロナを克服する日まで、がんばっていきましょう。きっと、新しい世界が待っています。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。慈しみ大切に育ててこられたお子様の立派に成長されました姿に感慨もひとしおのこととご推察申し上げます。生駒高校での3年間の高校生活を経て、お子様は心身ともにたくましく、頼もしい大人へと成長されました。どうかお子様の輝ける前途を温かく見守り、時には励まし、これからも支えていただきますようにお願いいたします。
皆様方には、3年間にわたり、本校の教育活動推進のために、温かいご支援と多大なるご協力を賜りましたことをこの場をお借りして、教職員を代表して心から厚くお礼を申し上げます。今後も引き続き、お力添えのほど、よろしくお願いいたします。
終わりに、309名の卒業生の皆さんひとり一人が、それぞれの世界に向けて力強く旅立ち、その前途が洋々たることを願って式辞といたします。
令和4年3月1日
奈良県立生駒高等学校 校長 八重 幸史