式 辞

 やわらかな日差しの中、木々の芽吹きが始まり、早春の息吹が感じられる今日の佳き日、令和2年度 奈良県立生駒高等学校 第56回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことを心から嬉しく思います。
 ただいま、卒業証書を授与されました311名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。卒業証書を手にされ、皆さんの脳裏にはどのような想いが去来しているでしょうか。知識はもとより思考力、判断力、表現力の習得に励んだ授業、青春のエネルギーを注いだ部活動、仲間との友情を深め、協力して一つのことを成し遂げることの素晴らしさを知った文化祭・体育大会・修学旅行。校章や校歌にもある「樫」の木の精神、「決して途中で諦めたり、へこたれたりしない。最後の最後まで全力で頑張り抜く。」という強さを本校で過ごした3年間でしっかりと身に付けてくれました。「真面目に一生懸命頑張ることが格好いい」という本校の良き校風もあらゆる場面で発揮してくれました。
 そんな高校生活3年間の最後の1年は、新型コロナウイルス感染症により十分な活動ができない日々となりました。
ちょうど一年前の3月2日から学校の「一斉休校」が始まり、3年生に進級した4月、始業式の後、すぐに臨時休業、在宅教育期間となり、登校できるようになったのは6月になってからでした。皆さんが目標にしていたインターハイや夏の甲子園大会などが中止となり、それに伴い、県予選大会やコンクールも中止になり、非常に悔しい、残念な思いをした人も多かったと思います。とりわけ、登校できず、仲間とともに部活動に取り組むことができない間も、個人で黙々と練習に取り組んでいた人にとっては、悔しい思いが残ったことと思います。
 卒業に際して、皆さんに、ゲーテの言葉を紹介したいと思います。
「涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の本当の味はわからない」
 何かを手に入れたいときに、苦労することなく簡単に手に入れた人と、苦労を重ね、精一杯努力し、やっと手に入れた人、二人の人がいました。皆さんはどちらの人が幸せだと思いますか? 多くの人が「簡単に手に入れた人」と答えると思います。
それでは、その手に入れたいものを手にしたときの喜びはどうでしょうか。どちらの人が大きな喜びを感じたでしょうか。苦労をし、努力を重ねた人の喜びは、きっと大きかったと思います。その喜びが「人生の本当の味」です。
 人生は、良いことばかりが続くことも、悪いことばかりが続くこともありません。自分の思いどおりに進まないことも多くあります。しかし、それを乗り越えたときの喜びはとても大きなものです。
 私たちは、毎日、学校で授業を受け、部活動に汗を流し、学校行事でクラスメートと協力し活動することを特別なことと思っていませんでした。今回のコロナ禍の中で、日常の学校生活を送れることのありがたさを痛感しました。皆さんは、新型コロナウイルス感染症の感染予防に努め、いろいろな制約の中でも、それぞれの目標に向かって精一杯頑張ってきました。皆さんは、大きな困難を乗り越え、今日の日を迎えました。
そして、これからの皆さんの人生において、困難に直面することもありますが、本校で身に付けた樫の木の精神で、逃げることなく、全力で、困難を乗り越えていってください。

 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。慈しみ大切に育ててこられたお子様の立派に成長されました姿に感慨もひとしおのこととご推察申し上げます。生駒高校での3年間の高校生活を経て、お子様は心身ともにたくましく、頼もしい大人へと成長されました。どうかお子様の輝ける前途を温かく見守り、時には励まし、これからも支えていただきますようにお願いいたします。
  皆様方には、3年間にわたり、本校の教育活動推進のために、温かいご支援と多大なるご協力を賜りましたことをこの場をお借りして、教職員を代表して心から厚くお礼を申し上げます。今後も引き続き、お力添えのほど、よろしくお願いいたします。
  終わりに、311名の卒業生の皆さんひとり一人が、それぞれの世界に向けて力強く旅立ち、その前途が洋々たることを願って式辞といたします。

令和3年3月1日

奈良県立生駒高等学校 校長 八重 幸史

 

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