2018年度 卒業証書授与式式辞
【卒業証書授与式式辞から】
花の香りが漂い、森羅万象あらゆるものから春の息吹が感じられる今日の佳き日、ここに奈良県立生駒高等学校 平成三十年度第五十四回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことを心から嬉しく思います。本日公私ともに何かとご多用にもかかわりませず、PTA会長 藤谷仁志様、樫葉会会長、吉岡宏之様、樫木会会長 石崎佳奈様をはじめ多数のご来賓、保護者、ご家族の皆様のご臨席を賜り、卒業生の門出に華を添えていただきましたこと、高段からではございますが、心から厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございます。
ただいま、卒業証書を授与された三百八名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。卒業証書を手にされ、皆さんの脳裏にはどのような想いが去来しているでしょうか。知識の習得に励んだ修学、青春のエネルギーを爽やかな汗に代えたクラブ活動、仲間との友情を深め合い、みんなで協力して一つのことを成し遂げることの素晴らしさを知った文化祭・体育大会・修学旅行といった学校行事でしょうか。校章や校歌にもある樫の木の精神を生駒高校の三年間でしっかりと身に付けてくれました。決して、途中で諦めたり、へこたれたりしない。最後の最後まで全力で頑張り抜く。「真面目に一生懸命頑張ることが格好いい。」という本校の良き校風をあらゆる場面で発揮してくれました。その中で、自分自身や友人の素晴らしいところ、かけがえのないもの、大切にしなければいけないものをきっと見つけてくれたに違いありません。
皆さんが手にした卒業証書は、皆さん一人一人のたゆまぬ努力と研鑽によって得られたことは勿論ですが、その陰には、深い愛情でいつも見守り続けて下さった家族の方々、友達、先生方など周りの多くの人たちの励ましや支えがあったからこそ授与できたということをしっかりと心に刻み、感謝の気持ちを新たにしてもらいたいと思います。そして今日、家に帰れば、必ずやその気持ちや想いを言葉にして伝えてくれるものと信じています。
機会あるごとに話をしてきましたが、君たちのような若者が頑張っている姿や夢に向かってひたすら邁進し努力を続ける姿を見て、私たちは元気付けられ感動をわけてもらいます。これからもどうか更に大きな夢や目標を持ち、チャレンジを続けて下さい。「夢があり、それを実現させる意欲は繁栄の原点である。」という言葉があります。夢や目標がなければビジョンを持つことも行動を起こすこともありません。成功して歓喜の声を上げるといったAIやロボットにはできない人間にしかできない大事な経験ができないことになります。人類の繁栄、日本の繁栄は、まさに君たちにかかっているのです。
人類の繁栄と言えばアメリカマイクロソフト社の製品を使ったことがないという人は世界中の人々の中でもあまりおられないのではないかと思いますが、創業者ビル・ゲイツ氏は皆さんと同年代の頃コンピュータに目を付け、大学生になってマイクロソフト社を立ち上げてソフトウェアの開発に打ち込み、会社を軌道に乗せることに成功しました。そのビル・ゲイツ氏が高校・大学生だった当時を振り返って「高校・大学時代というのは、新しい経験に出会い、とてつもない夢をつむぐ年頃」と語っています。
また昨年、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学特別教授の本庶 佑先生がNHKのインタビューの中で、これまでの研究を振り返ってこんなことを仰っていました。「自分が何を知りたいか、はっきりしていないと研究というものはぶれてしまう。何ができるかでなく、何が知りたいかであって、できることばかりやっていると目標を見失う。常に何が知りたいか問いかけながらやってきた。」と述べられていました。さらに「人が言っていることや教科書に書いてあることをすべて信じてはいけない。『なぜか』と疑っていくことが大事だと思っている。」と話されました。私もそうですが、我々教師や生徒の皆さんからするとドキッとするような発言です。「教科書に書いてあることが信用できなければ、勉強ができないではないか。」と考えてしまいます。恐らく本庶先生は「人が言うことをすべて何もかも鵜呑みにして疑うことなく、そのまま信じてはいけません。」と実証主義の大切さを説いておられるのだと思います。私が学生の頃から教科書の内容が変わったことはたくさんあります。日本で最初の貨幣は和同開珎(わどうかいほう)と教えられていましたが、それから(わどうかいちん)となり、今では富本銭と教えられています。どうか皆さん、いつまでも向学心に燃え探究心旺盛で主体的深い学びを身に付けてください。
ただ、人生においては自分自身に問いかけながら一生懸命に歩みを進めても失敗はつきものです。若さゆえの過ちもあります。自信を失ったり人生に迷うこともあります。そんな時は、どうかこの生駒高校という母校にゆっくり羽根を休めに帰って来てください。新たに行動を起こす元気を取り戻して、また羽ばたいて行ってくれれば幸いです。生駒高校の門戸は皆さんにいつでも大きく開いています。
卒業生の保護者の皆様、ご家族の皆様、本日はお子様のご卒業誠におめでとうございます。ひたすら慈しみ大切に育ててこられ、これ程までに立派に成長されましたお子様の勇姿に感慨もひとしおのこととご推察申し上げます。生駒高校での三年間の高校生活を経て、お子様は心身ともにたくましく、頼もしい大人に成長されました。これからもどうかお子様の輝ける前途を温かく見守り、時には励まし、支えていただきますようにお願いいたします。
三年間にわたり、本校教育活動にご支援ご協力を賜り、本当にありがとうございました。教職員を代表して心から厚くお礼を申し上げます。これからも引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますようによろしくお願い申し上げます。
校長 森 田 茂