平成30年度第56回入学式学校長式辞
【入学式 式辞より】
一足早かった桜の開花に遅れてなるものかと、春の花々がまるでこっそりと準備をしていたかのように彩りを競い、モノトーンだった庭に、天然色の春が一気に舞い降りてきたような装いのある今日の佳き日、ご来賓、保護者の皆様方のご臨席を賜り、第五十六回奈良県立生駒高等学校入学式をかくも盛大に挙行できますことは、私共、教職員にとりましてこの上ない喜びであります。高段からではございますが、心から厚く御礼申し上げます。
ただいま、入学を許可しました三百二十名の新入生の皆さん、生駒高校入学おめでとう。今、皆さんは、入学の喜びとこれから始まる高校生活への期待に大きく胸が膨らんでいることでしょう。先輩方が脈々と築いてこられましたこの生駒高校に新入生として皆さんをお迎えします。在校生、教職員を代表して、皆さんのご入学を心より祝福し、歓迎いたします。皆さんが、今日こうしてこの場に立つことができた背景には、心から慈しみ大切に育ててこられましたご両親様をはじめご家族の方々、小・中学校の先生方、また、皆さんを見守りつつ愛情を注いでくださった数多くの関係者の方々のご支援と教えがあったからこそです。そのことを決して忘れてはいけません。高校生になるということは、このようにはっきりと形に見えないものを思いはかり、実感をもって悟れるようになるということでもあります。これから始まる三年間の高校生活を通して、高い知識と教養、豊かな人間関係、逞しい心と体を備えた人間として自らを鍛えあげ、成長を続けていくことが、こうした方々へのご恩にお応えすることになり、感謝の意を伝えることに繋がります。
本校は昭和三十年代半ば、「生駒町に高校を」という地域の方々の熱い思いによって、昭和三十八年に創建されました。その後も学校の施設設備への援助、通学路の拡張、校庭の整備、植樹、図書の寄贈等、地元の絶大なご支援をいただいてまいりました。こうした熱意をしっかりと受け止め、一万九千名を超える数多くの巣立っていかれた先輩方が、本校の校訓「剛毅、敬愛、創造」を行動の指針とし、奈良県をはじめ日本全国ばかりか世界の各地、各界において社会の発展に多大な貢献をされていることは本校の誇りであり、自慢とするところであります。言葉通り「剛毅」とは、意志が強く、決してくじけないこと。「敬愛」とは、周りの人を尊敬し、親しみの心を持つこと。「創造」とは、新しいものを自ら作り出すこと。校訓とは、単なる言葉やスローガンといったものではありません。この生駒高校で学んだ人たちにとって共通の精神となるものです。生駒高校は、創立以来、そういう学校であり続けてきました。これからもずっと、この校訓を大切に守り続けていく学校でなければなりません。三百二十名の皆さんには、今後このことを自らの誇りとして、守り伝えていく役割を担ったことになります。また、生駒高校生には「真面目に一生懸命頑張ることが、格好いい。」という校風が醸成されています。これから始まる高校生活のあらゆる場面でこういった先輩の姿を目の当たりにすると思いますが、このような良き校風が大切に守り継がれているのも先人の方々の薫陶のたまものです。本校の校歌や校章にも示されております樫ですが、樫の木はとても丈夫で防風林にも利用されるような芯のしっかりとした堅い木です。「どんなに辛く、くじけそうな時でも決してあきらめたり、へこたれたりすることなく、最後の最後まで頑張りぬく。」という樫の木の精神をしっかりと身に付け、良き校風を受け継いでください。
話は変わりますが、皆さんの誰もがご存じだと思いますが、将棋の藤井颯太六段です。確か、皆さんと同い年だと思いますが、彼の快進撃はご承知の通りです。五段になってからわずか十六日で史上最速となる六段に昇進し、対局数、勝数(かちすう)、勝率、連勝数の記録全4部門で2017年度の一位を独占するという凄まじい快挙を成し遂げ、将棋大賞の特別賞と新人賞を獲得しました。これほどの実力がありながら、彼は決しておごることなく、対戦相手や周りの人々への気遣いと丁寧な言葉使いを忘れない高校の新1年生です。誰もが天才だと考えますが、話し方はおっとりとしていて子供のような純朴さと木訥さがにじみ出ています。ところが、ひとたび将棋のことを考え出すと、周りのことが何も目に入らないほど集中力が高まるそうです。小学生の頃、帰り道で将棋のことを考えていて溝にはまるというエピソードや将棋会館に服や荷物をすべて忘れて空の鞄で帰宅したといった話もあります。それ程、のめり込み、集中して取り組める物が見つかれば、満足な充実した人生となり、心の豊かさにもつながるような気がします。ですから高校時代に何か打ち込める物、周りのことが気にならないほど集中できる物が見つかれば、充実した高校生活になるのは間違いありません。学業でも生徒会活動でもクラブ活動でも資格や検定の取得、趣味や特技でも何でもいいですのでこれから見つけてはどうでしょうか。
過日、開催されました平昌冬季オリンピックやパラリンピックでは日本人選手のメダルラッシュとなり、多くの若い選手からたくさんの元気と感動をもらいました。皆さんが高校3年生になる年には東京オリンピック大会が開催され、多くの若者の活躍が期待される大会となりそうで、今からとても楽しみです。同様に、ここにいる皆さんから生駒高校在籍中に一つでも多くの感動や元気をもらえることを楽しみにしています。
保護者の皆様、お子様が三年間の高校生活を充実したものとするためには、生徒自身の努力はもちろんですが、保護者の皆様と私たち教職員がともに協力し、支え合っていくことが何よりも大切と考えます。皆様方の力強いご支援とご協力を賜りますように切にお願い申し上げます。
最後に新入生の皆さん、三年後、「生駒高校に通って本当に良かった。一生忘れられない充実した高校生活だった。」と心から言えるように、日々の精進を期待しています。生駒高校の教職員は皆さんを全力で教授し、全面的に支援していくことを約束して第五十六回入学式の式辞といたします。