11月10日(木)、「課題研究α」の公開講座「カラスの研究を通じて気づいたこと」が行われました。

 講師は、東京大学総合研究博物館 特任助教 松原始先生です。松原先生は奈良県のお生まれで動物行動学を研究されており、なかでもカラスの生態に関してとても造詣が深く、カラスに関する数多くの著書を出版されています。今日の講演会は、課題研究でカラスの生態をテーマにしている2年小坂翔真さんのたっての希望で実現し、東京から松原先生にお越しいただきました。

 日本の主なカラスであるハシブトガラスとハシボソガラスに関するお話をして下さいました。

 ハシブトガラスは、翼を広げると1mにもなるカラスでクチバシが太く頭が丸いという外観を持っています。澄んだ「カー」という声で鳴き、鳴くときには尾羽を上下に振るという鳴き方をします。雑食性で昆虫や木の実や動物の死骸なども食べます。高所に留まって地上を見下ろしながらエサを探し、エサを見つけるとほとんど歩行しないそばまで飛んで降りてきて、エサを咥えると高所に戻ってエサを摂ります。日本では都市部に多く生息しており、ゴミ袋をやぶってゴミを撒き散らかしたりするのはハシブトガラスの摂餌が原因になっています。

 ハシボソガラスはハシブトガラスより小さく、クチバシは細く頭が丸くないという外観を持っています。濁った「ガーガー」という声で鳴き、鳴くときには頭を伸ばして上下に振るという鳴き方をします。雑食性ですがハシブトガラスよりも植物食性が強い傾向があります。エサを探すときは地上へ降りてきて、二足歩行しながらエサを探すので、地上を歩く時間がハシブトガラスより長いという傾向があります。日本では河川敷や農耕地や林の周縁部などに生息しているのは、それまで都市部に暮らしていた個体がハシブトガラスに追いやられて都市から離れて生息するようになったという変遷もありました。

 先生が小学生の頃、家の近所の林にカラスの群れがたくさんいるのを見たり、群れのカラスに向かって「カー」と声をかけると「カー」と返事をしたカラスがいたという経験をされたそうです。松原先生がカラスの生態を研究するきっかけになったのはその後大学の研究室で研究テーマを選ぶ際に、カラスの先行研究がほとんどなかったことや、小学生の頃に返事をするカラスに出会い「カラスは面白いやつ」という印象をおもちだったことが大きな理由だそうです。

 今回の講演会には「課題研究α」の履修生徒以外にたくさんの生徒が参加しました。講演後の質疑応答にもたくさんの質問が寄せられましたので、予定時間を過ぎても松原先生はとても丁寧に質問に答えて下さいました。

 

 畝傍高校では、学校内の授業だけで教育が完遂するわけではなく、学校外のさまざまな機関・人材からあらゆる機会を通じて学ぶために、このような学習の場を設けております。