第08号(平成5年4月5日月曜日)


樫葉会に思う 会長 吉岡宏之

 会長に就任しまして、2年目に入りました。昨年を振り返ってみますと、5月10日には恒例の樫葉会総会が開催されて、例年のように同窓会員が参加していただき感謝しております。加えて、我が生駒高等学校も創立30周年を迎えまして、10月7日には「30周年記念式典」が盛大に行なわれました。
 又同記念行事の一環としまして、同窓会員の5期生津川昭氏の講演もありましたし、又私自身も、30周年記念実行委員長としまして参加及び出席すると共に、成功裡に終了して、大役をはたすことができ、大いに意義深いものであったと感ずる次第であります。
 樫葉会も、第1期生を初めとして、毎年毎年卒業生を会員と迎えまして、増大して来ました。今年、28回目の新会員が入会して11,000余名の会員を容する大所帯に成長しました。毎年5月の第2日曜日に開催される樫葉会総会では、年間の予定計画の説明や前年度の決算報告等が行なわれ、こうした総会行事は役員の奉仕・努力によって順調に消化して、その後は懇親会ということになっております。
 この懇親会ではかって共に学んだ者同志で学生時代の思い出を話し合ったり、現在の仕事・生活も話題となり楽しい時間を過ごしていただけるはずです。
 ところで、昨年樫葉会の一つの発展としまして、第1期生会を計画し、開催しました。日時12月6日、会場第1期生の経営旅館、参加人数西野初代校長や恩師4名を含む約50名、天気の方も晴天となり、又計画段階では不安及び心配であった恩師の先生の参加ないし会員の参集も、当日になり会場に行ってみますと、あちらこちらに恩師の姿及び同期生の顔があり、不安等も一度にぬぐい去られた感じを覚えました。
 そこで、我々としましては、樫葉会総会も重要でありますが、総会を集合場所としていただき、その後同期生会或いはクラスの同窓会を計画していただきたいのであります。会員多数の色々なふれあいを考え、提案していただきたいと思っております。


新しい校史の創造に向かって 学校長吉井弘侑

 30周年記念行事も、本校同窓会や育友会の皆さんの心からの御協力と御援助で、大きな感激のもと、無事終わりました。紙面をお借り致しまして、会長さんはじめ、皆様方にお礼を申し上げます。
 この記念行事の成功を目指して、委員会を組織していただき、各種の事業を進めました。
 特に、植樹、記念碑、スクールギャラリィーなど、今後の本校を特色づけるものが、立派に出来あがり、植づいています。
 これらを毎日ながめるにつけ、私は、新しい目標にむかって、本校がすでに歩み始めていることを心に強く意識するのです。
 確かに、30周年の歴史は、校舎のいたるところに刻まれ、徐々に老朽化しています。特に、体育館や食堂などは緊急の課題であります。
 しかし、同時に、教育の具体的内容をどう展開するかという課題も、前述の課題以上に重要であります。
 生徒達の進路は、多様になってきました。それだけ自らのこれからの生き方、在り方について、真剣に考え、迷っているのが実情です。そんな生徒達に、確かな学力と心豊かで、たくましく生き抜く生命力を保障していく努力を我々は続けなければならないのです。「目標は小刻みに」という言葉があります。30年の歴史の上に、新しい10年の軌跡を残したいものです。
 日々に変化する社会の中で、「静かで、清潔で、規律ある、学ぶことの楽しさと感動のある生駒高校」の創造を目指して、心を新たにする日々であります。


生駒高校創立30周年記念事業

 平成4年で生駒高校は創立30周年を迎え、30周年記念式典が行われました。式典には県教育長、文教副委員長、県会議員、市会議員、歴代校長、同窓会長などが招かれ、盛大に挙行されました。また記念式典に先立ち記念講演も行われました。講演をしていただいたのは、本校5期生の津川昭さんです。津川さんは、前全日本ハンドボールチーム監督で、現在全日本ハンドボール協会男子強化委員長をされています。演題は「今、皆さんに求められているものは何か」というものでした。
 創立30周年の記念事業として記念式典や講演以外にもいろいろな事業が行われました。環境整備事業として、玄関正面のスクールギャラリー・焼却炉周辺の整備、食堂の藤だなの改修や各所への植樹などです。また、元教員及び育友会有志の寄贈による30周年シンボルマーク(北館北側)も寄贈されました。
 さらに、生駒高校の30年の歴史を綴った「奈良県立生駒高等高校30年誌」も発刊され、30年の歴史が一読できるようになっています。
 樫葉会としても、協賛事業として同窓会各簿の発刊をおこない、また同窓会館の「樫葉会館」の周辺整備も行いました。それだけでなく記念事業に対する500,000円の拠出金でも協力しました。
 このように生駒高校の創立30周年記念事業には、いろいろな人々、団体からの援助・協力によって、成功裡に終えることができました。


いこまおろし

 「ふるさとは遠きにありて思うもの そしてかなしくうたうもの」というのは室生犀星が大正3年に書いたものだが、犀星自身がふるさとに居て歌ったものであるとか、東京に居てふるさとを歌ったものであるとかいう書誌学的議論は、この詩の内容とは無関係である。犀星はふるさとに対する実感を述べたまでなのである。
 ふるさとを慕う気持ちは、誰しも持つものである。が、慕われるふるさととはどんなものなのか。ふるさとを訪れる者は誰しも古き良き時代を求めるのだが、ふるさとといえども、山河といえども、ゆく河の流れの鉄則から逃れられないものであるはずだ。
 そう思いつつも、浦島太郎の過ちをおかしてしまうことはよくあることである。それほどにふるさとの私たちを引き付ける力は強いのである。
 それゆえにこそ、ふるさとは「遠きにありて思うもの」であり、「かなしくうたうもの」なのだろう。


津川 昭氏・講演要旨「今皆さんに求められているのもは何か」

 十何年ぶりかで母校を訪れて、周囲の風景の変化には驚きました。例えば、クラブを抜け出して魚釣りをした小川もなくなってしまいました。しかし、この講堂が以前と変わらず美しく管理され、生徒の皆さんが、実に真面目であることが非常にうれしく思いました。
 さて、皆さんは今、人生のうちで一番輝いた時期の真ただ中にあります。何でもその最中にある時には気付かないもので、年を取ってはじめて若さのすばらしさに気付くものです。このすばらしい時期に何をすればよいのか、ということについて、長い間ハンドボールをしてきて教えられた私自身の経験をもとに、お話ししたいと思います。
 高校時代はたいしたプレーヤーではなく、インターハイも国体も行ったことはありませんでした。しかし、大阪選抜チームに負けた時のくやしさがバネになり、「何とか勝ちたい」「日本一になりたい」と思い、今までハンドボールを続けてきました。どうすれば勝つことができるのかということを追求してゆくうちに、多くのことを学びました。
 試合に勝つためにはまず第一にチームワークが大切です。チームワークには目に見えるものと、目に見えないものの2つがあります。目に見えるチームワークとは、チームを盛り上げ、信頼感を高めることです。例えば、ハンドボールで相手の速攻をくらって、絶対に間に合いそうにないのに、一生懸命追いかけたり、バレーボールで味方のチームのオーバーバウンドしたボールを、これももう間に合わないのに追いかけてゆくといったことです。人間は感情に左右されやすいので味方が一生懸命な姿を見てファイトが湧き、チームのムードが盛り上がり、勝利に結びつくことがあるのです。一方、目に見えないチームワークとは何かというと、相手に対する気配りだと思います。スポーツマンは一見、豪快で明るいイメージがありますが、実は人一倍繊細なのです。それは、常に多くの情報を収集し、的確な判断を下さねばならないからです。そのためには、周囲に対する気配り、次の人に何ができるかを考えなければなりません。相手に対する思いやりの心は普段の生活の中で身に付くものです。次に使う人のために風呂を掃除しておくことなどもその一つです。
 もう一つ大切なことは、物事を積極的に前向きに考えることです。ハンドボールでも、監督や先輩にやらされてプレーしている選手と、自分の頭で考えてやっている選手とでは伸び方が違います。同じように勉強でも何でも、いやだいやだと思ってやるのと、やってやろうと思ってやるとのでは効果が違うはずです。
 皆さんの世代はまだ何をしてよいかわからないかもしれません。何か熱中することを見つけて、思い切ってその中に飛び込んでみて下さい。勉強もスポーツも恋愛も、挫折せずに、たえずプラス指向で積極的に考えましょう。若さには無限の可能性が秘められています。毎日を一生懸命充実して生きて下さい。


卒業生の活躍

 卒業生が10,000人を越えた現在、全国各地で各国で活躍しています。今回はそうした卒業生の一人、西田マコ(西田昌子)さんを紹介したいと思います。
 西田マコさんは昭和53年に生駒高校を卒業しました。絵の勉強は高校在学当時から近くの玉井美術研究所に友人と通い勉強したそうです。進路は多摩美術大学油画科を選び、入学。卒業後も大学の方で研究を続け、その後渡米しました。アメリカでは知人宅に下宿し、カリフォルニア州のソノマ大学の版画科に在籍しました。さらにアカデミー・オブ・アートカレッジの大学院版画科を卒業した後、版画家・画家としての生活に入りました。
 今は、アイルランドの留学生と結婚し永住権も取得し、将来にわたってもアメリカに滞在する予定だそうです。
 酉出マコさんのアカデミー・オブ・アートカレッジ卒業後から現在までの活動は次のようになります。
1988年
 パシフィック プリント、88展入選(カリフォルニア)
1989年
第16回ジュリード展入選、及び永久コレクション(ニューヨーク)
1990年
 招待作家プリント展(ニューヨーク)
 パシフィック プリント展 、90展入選(カリフォルニア)
1991年
 西海岸アート展(静岡県浜松市)
1992年
 カリフォルニア アート展(栃木県宇都宮市)
 西田マコ作品展(奈良県桜井市)
 今の西田さんのテーマはタイム(時間)、スペース(空間、宇宙)です。そのタイム・スペースを2次元のキャンバスに表現しようとします。絵は抽象画で、1m四方のキャンバスに描かれた卵型の造形は凹形でもあり凸形でもあるようにみえます。そしてカオスから生ま れでようとする胎動が、素朴な色づかいの中に原初的な感動を呼び覚ます絵でした。
 今後は版画の方にも力を尽くしていきたいとのことでした。